7月の研究会(正食クッキングスクールの指導員・講師陣の研鑽の場)に、鍼灸院の院長で、統合医療専門クリニックで鍼灸治療と食養相談を担当する西下圭一先生に特別講義をしていただきました。きっかけは、前回の研究会で行われた「手当法のシェア会」について話をしたところ、患者さんを診ている立場での様々な事例があるということで、講義をお願いしました。
東洋医学を勉強している人は、陰陽のことや食養のことを知っていると思われがちですが、そんなことはないそうです。みんなが知っているのなら、東洋医学系の業界紙「鍼灸柔整新聞」に連載依頼は来ません、と西下先生。
今回、参加者に伝えたいポイントは、いかに見極めるかということが大事。どんな状態であっても受け入れるこができるか。この2点だと言われました。
先生の鍼灸院に「病気で困っているが、食事と手当てについて教えてほしい」という電話が突然入ることがあって、すぐによくなりたい気持ちは分かるものの、あまりにも唐突な質問が多く困惑することも多々あるといいます。
「健康になるためには何をしたらいいでしょう。本当は何もしなければいいのです。何かをしなければいけないと思い込まされているわけです。何もしなくても身体に自然治癒力が備わっていますから、本当は治ります。食事を変えても変えなくても治る時は治ります。ただ食事を変えて生活を見直すことによって治りが早くなります」
「マクロビオティックを勉強してこられると、マクロビオティックがすべてだと思われるかもしれませんけど、効かないこともあるんです。どういうことかというと、玄米菜食をしたりとか、食べものに気をつけたり、もしくはお手当をしたり、ということは必要条件であって十分条件ではないんです。
それは必要だけど、それをやったからといって治るものではない。それよりも大事なものがいくつかあるわけです。その大事なものを見極めていくということなんですけど」
「東洋医学者という立場から言うと、異なる病気であっても同じ治療法をすることもあれば、同じ病気であっても違う治療法をすることがあるんですね。
これが東洋医学の神髄なんです。西洋医学は、一つの症状に対して、一つのお薬で対応します。一対一の関係性で、それをマニュアル通りやっていくのが西洋医学の主な治療法。
東洋医学は、今現れている症状だけに目を奪われるよりも、根っこに潜んでいる性質とか状態を適切に見極めていくということ。ここが西洋医学との決定的な違いです。
『何を食べたらいいですか』という質問は、一対一の関係性のままなのです。
「病気の数は増えていっています。ということは、一対一の関係性でいくと、治療法も増える一方なんです。ぼくがなぜ多くの種類の患者さんを診ることができるかというと、やっていることが同じだからです。陰陽の解釈、延長線上で対応している」
「見極めるというのは、刻一刻と変化する性質状態を適切に。見極めるためのツールとしてあるんですね。それは何かというと「魔法のメガネ」です。魔法のメガネとは陰陽です。陰陽とは、刻一刻一刻と変化していきます」
この後、プロジェクターの映像を通して、季節、一日、一カ月、一年、食物、性質、感情の陰陽について解説があり、自然界の変化と身体の関係、臨床の現場とマクロビオティックについて、豊富な事例報告がありました。
講座修了後、「このような講座をもっと早く企画してほしかった」という声が多くありました。
正食協会で3回シリーズで開催中の西下先生の「未病を治す意識と、自己診断法」講座に是非ご参加ください。お待ちしています。