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【免疫力UP情報】患者らに食養伝える 東京・あしかりクリニック②

【免疫力UP情報】
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第23弾は「むすび誌2019年2月号」より食が癒す心のやまいの記事をご紹介します。(全2回)。
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3が月で家族が体質改善

―食養とのかかわりはどんなことからでしょうか。

 漢方に興味があり、最初は漢方薬で更年期障害やだるさなどの精神症状を治せないかと思いました。
 漢方の師匠であり尊敬する王瑞雲先生から、「漢方薬だけ飲んでいてもよくならない。ちゃんと食養をしないと効かないわよ」と言われて、10年ほど前に食養学院に入りました。
 当時、娘はニキビがあり、息子は尿酸値が高く、私は子宮がん検診で異型細胞があると診断され、主人もがんのときに高くなるデータが少し上がっていたので、日本綜合医学会が言うとおりの食事にしてみました。
 主食は玄米だけ、動物性はできるだけなしで、食べても魚か少しの鶏肉にして、なるべくパンも食べない。乳製品は完全にやめました。
そうして家族で取り組んだら、3か月で私の異形細胞がきれいさっぱりなくなり、全員が健康になりました。本当に驚きました。からだは3か月で変わるんだと実感しました。

食から認知症にアプローチ

―食養教室は精神科ショートステイケアのプログラムとして行われているということですが、開設した理由は?

 精神科のクリニックでふつうは臨床心理士がカウンセリングをして、精神科医が診療をします。
 私は、こころはからだとつながっているので、カウンセリングだけでなくからだの方からもアプローチしたいと思いました。
 認知症が専門なので、認知症というのは脳という内臓が変質して起こる病気だから、食べもので脳をよくするということが、時間はかかってもきっとできるだろうなと考えたからです。
 そのためには、私が食養を実践してからだが変わったということを患者さん自身が体験しないと信じてくれないのではと思って、食養教室を始めました。

脳腸相関の研究に着目

―精神科を受診する人に特徴的な食事の傾向はありますか?

 甘いものが好きですね。精神科においでになる方は、多かれ少なかれストレスを感じやすい、ないしは本当にストレスが多いので、ストレス発散のために何ができるかというと、男性だったらタバコを吸う、女性だったら甘いものを食べるというのが、すぐに幸せな気持ちになれる手っ取り早い方法なのではと思います。
 甘いものを食べていると、志向としてはあまり野菜を食べようということにはならないですね。

―そうした人たちが、実際に食を変えることによって、脳も変わるのでしょうか。

 食養教室では、確かにみんな健康になります。それは、体調がよくなることで活動的になり、その結果うつが治るという感じで、食べたものがいきなり脳にいって、脳がよくなるというようには見えません。
 ところが、京都府立医大の内藤裕二先生の研究で、脳と腸が関係しているという「脳腸相関」が科学的にわかってきて、これだと思いました。
 内藤先生の論文では、水溶性食物繊維をたくさん食べると、いわゆる善玉菌が増えて、酢酸・酪酸・プロピオン酸の3つに分解され、プロピオン酸などが肝臓の門脈の受容体にくっついて、脳にシグナルを送っているとありました。
 そこで、内藤先生の絶大な協力を得て、統合失調症の患者10人と不安性障害の患者10人の腸内フローラ(細菌叢)が食事でどう変化するかという研究を、患者さんの同意を得て2018年4月からやり始めました。
 水溶性食物繊維を増やして動物性タンパクと脂を減らすと、4か月後に患者さんの腸がどうなったか、だんだんと結果が出てきています。

善玉菌が増え賞状は減傾向

―いまのところはどんな結果でしょうか。

 統合失調症の人は、例えば、被害妄想があったり、少し幻聴があったり、関係妄想(自分に無関係な周囲の人びとの会話や動作などを自分に関係づける妄想)だったり、動けなくなったりという精神症状があります。
 データとしては現在分析中ですが、印象としてはそうした精神症状が少なくなった、頻度が減ったということはあります。いつも泣くほどおかしくなっていた人が泣かなくなったとか、うつエピソード(症状)の頻度が減るとか。
 この研究の結果、悪玉菌もメンタルにはいいことをしているのかもしれないと思いました。
 じゃあどうすればいいのかというときに、やっぱりできることは善玉菌を増やすことしかできません。4か月後には、ほとんどの人が善玉菌が非常に増えました。
 善玉菌が12%しかなかった人が30%ぐらいまで増えたり、0%だった人が13%にまで増えたりする例もありました。
 水溶性食物繊維を増やし、動物性の脂やタンパクを少し減らしていくことで、善玉菌は増え、精神状態は少しよくなる。悪玉菌は変化なし。というところまでわかりました。
 だからメンタルをよくする食養というのが何なのかというのは、まだまだ謎です。
 ただ、玄米を食べれば便通もよくなりますし、水溶性が少ないかもしれませんが食物繊維も入っていますし、アプローチとしてはまんざら間違った方向になっていないのではと感じています。

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芦刈伊世子(ありかり・いよこ)
平成2年長崎大学医学部を卒業、慶應義塾大学医学部精神・神経科に入局後、国立病院東京医療センター、慈雲堂内科病院、浴風会病院、慶應義塾大学病院において臨床経験を積む。地域診療をしていきたいという思いがあり、平成14年9月にあしかり医院クリニックを開院。平成26年6月より移転。脳と心の予防センターを併設することとなり、グループセラピーもはじめる。平成27年9月には東京都の指定で中野区地域連携型認知症疾患医療センターを運営する。
  • 2021年12月23日 15時08分更新
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