軟らかい食べもので歯周病
岡崎さんは、講演などの際によくクイズを出します。簡単なものから、ちょっとひねったものなど、バリエーション豊かな内容で、聴く人たちを飽きさせません。
左上の写真も、それらの定番クイズの一つに登場します。
「二枚ともサルの口の中の写真です。一枚は野生のサル、もう一枚は動物園のサルの口の中です。どちらが動物園のサルでしょうか」
少し考えてみて下さい。ちなみに、サルは動物園でも野生にいても、歯は磨きません。
比べてみてわかるのは、右側の写真のサルの口は、歯がとがって、歯と歯茎の境目にたくさんの汚れ(歯垢)がつき、歯茎がブヨブヨとしています。実はこれが動物園のサルの口なのです。「歯周病を起こしています」と岡崎さん。
歯周病は、かつては歯槽膿漏と呼ばれていました。歯垢の中の細菌によって歯肉が炎症を起こし、歯を支える骨を溶かしてしまい、最終的には歯を失うという、怖い感染症です。
一方、左の野生のサルは、口の中の汚れが少なく、歯と歯茎の境目には歯垢がついていません。
この口の中の差をつくり出したものが、食べものなのです。
動物園のサルは、食べやすくした軟らかなエサを食べています。
野生のサルは、木の葉をたくさん食べ、その次に木の実や木の皮など、自然のままの状態で口にしています。中には硬いものもありますから、よく噛んでいます。
ということは、野生のサルは歯茎が引き締まり、唾液がたっぷり出て汚れが流されているのです。
※写真にはむすび誌2016年12月号記事内をご参照ください。
リンゴとケーキを切ると…
犬などのペットも、缶詰や軟らかいドッグフードなどばかりだと、歯周病にかかって歯茎がブヨブヨになることがあるそうです。
軟らかいものを食べて歯周病が増える仕組みについて、岡崎さんは次のようにわかりやすく説明しました。
「ナイフでリンゴを切ると、ナイフは汚れません。でも、ケーキを切ったら、ナイフに汚れがべったりとつきます。このナイフがそのまま私たちの歯です」
二枚のサルの写真を見た岡崎さんは、「口は食べものが入ってくる最初の場所だから、食べものが変われば、最初に変わるのは口なんじゃないか」と考えたのです。
子どもたちに歯周病が目立ってきているのも、軟らかい食べものが増えたことが原因の一つともいわれます。
【免疫力UP情報】お口から考える食育⑤へ
-----------------------------------------------------------------------------------