肥満化する人類の福音にも
γーオリザノールについての益崎教授らの一連の発見は、冒頭でも紹介したとおり、世界的な学会誌で取り上げられて、国際的にも注目されています。
益崎教授によると、最近の医学研究では、肥満や糖尿病の治療薬の開発がうまくいかなかったこともあり、毎日の食事を見直すことで健康や長寿を目ざそうという「原点回帰」ともいえる流れがあるそうです。
玄米もまさにそうした中で評価されてきたわけですが、研究の中心となっている欧米の研究者はお米にほとんど縁がなく、「玄米とはどんな形をしているのか。おいしいのか」とよく聞かれるそうです。
それだけに、当初はγーオリザノールについての論文を提出してもまともに取り合ってはもらえず、門前払いされたといいます。
しかし、データを重ねて論文に仕上げるという地道な作業を続けるうちに、信用が生まれ、評価されるようになりました。
お米についての世界的な研究は、農学分野ではアジアで盛んですが、医学分野ではほとんどなく、圧倒的に日本が先行しています。
「オリザは米の学名。オリザノールは米の油という意味ですから、米糠にしかありません。まさにジャパンフラッグといいますか、日本を象徴する食べものです」(益崎教授)
現在、世界では8億人余りが飢餓に苦しむ一方、ある調査によると、肥満を含む過体重の人は22億人もいます。実に3人に1人が太りすぎで、2015年には肥満に関連する疾患で400万人が亡くなり、小児肥満も増加しています。
日本人と切っても切れないお米、中でも玄米の効用を見直すことでもたらされる恩恵は、計り知れないものがありそうです。まさに玄米は人類を救うパワーをも秘めているのです。