岩塩は大半が塩化ナトリウム99%以上
原料としてほかによくあるのが【岩塩】です。
岩塩といっても、もともとは海水です。海だった場所が地球の地殻変動で陸地に閉じ込められて塩湖ができ、湖水がだんだんと蒸発して濃縮されてできたものです。さらにその上に土砂が堆積して、地中に埋まった状態になっています。
日本では岩塩が採れませんが、世界的にみれば、全塩生産量の三分の二は岩塩です(塩分の濃い地下水のかん水を含む)。
例えば、ドイツ語で塩はザルツで、ドイツのザルツギッテル、オーストリアのザルツブルグ、英国スコットランドのソルトコーテスなどは、岩塩との関係が深い地名と考えられます。
地中で結晶化するため、鉱石などが混入することもあり、赤色や黄色、灰色、青色などの色を帯びていることもあります。
意外に思われるかもしれませんが、ほとんどの岩塩の成分は99%以上が塩化ナトリウムです。天日塩と同じく、分離結晶して高純度の塩化ナトリウムの層ができ、そこから掘り出すためです。
岩塩は、結晶化したものを掘り出したり、水で溶解して採取すれば【採掘】、粒をそろえるために細かくすれば【粉砕】、土砂などの異物を除くために飽和食塩水でよく洗えば【洗浄】という工程表示になります。
異物が少ないものはそのまま食用にされますが、たいていは溶融して採掘したり、次で紹介する方法で再製されます。
岩塩が雨水や地下水で溶けて湖になった塩湖で、干上がった塩湖や塩湖水から製塩したのが【湖塩】ですが、日本にはありません。
ニガリ成分を加えた再生塩も
【再生塩】【再製加工塩】というのもあります。
高純度の天日塩や岩塩、イオン交換膜法の塩に、もともとの海水から失われたミネラル分(ニガリ成分の塩化マグネシウムなど)を加えて、成分を調整したものです。日本近海の海水に溶かしてかん水をつくっている場合もあります。いずれも釜で煮詰めて結晶化させます。
原材料でニガリは、「粗製海水塩化マグネシウム」と表示されます。
逆浸透膜法で深層水を濃縮
ほか工程としては、【逆浸透膜】【噴霧乾燥】【加熱ドラム】があります。
水だけをとおす半透膜を境に、片方に真水、もう片方に塩水を入れると、塩水を薄めようと、半透膜をとおって真水が塩水の方に移動しますそこで、逆に塩水の方に圧力をかけると、水だけが真水の方に移動し、塩水側の濃度が増していきます。これが逆浸透です。
もともと海水から淡水を得るための逆浸透の技術を応用し、海水の塩分濃度を上げるために使われ始めたのが逆浸透膜法です。
製塩では、表層水に比べて格段に不純物の少ない深層水の濃縮方法としても利用されています。
噴霧乾燥と加熱ドラムは、平釜で煮詰めて濃縮した塩を、加熱した空気とともに噴霧したり、加熱したドラムに吹きつけたりして結晶させる方法です。
【参考資料】・「おもしろサイエンス 塩と砂糖と食品保存の科学」
(食品保存と生活研究会編著、日刊工業新聞社)
・「食塩と健康の科学」(伊藤敬一著、講談社ブルーバックス)
・「知っトク情報 正しい塩の選び方」(ドクターソルト研究所著、日本食用塩研究会発行)
・ 西日本新聞連載「素朴な疑問 食品の裏側から 調味料・塩」(安部司著)