【免疫力UP情報】
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第32弾は「むすび誌2016年3月号」よりオールアバウト塩の記事をご紹介します。(全10回)。
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塩の話⑤
「減塩」よりも気をつけたいこと
塩のことをいろいろとみてきましたが、最後に減塩風潮など気になる人体との関係、塩の上手な使い方などについてまとめてみました。
塩分と血圧はどこまで関係?
塩分と血圧との関係については、さまざまな研究が行われてきました。
その中で注目されたのが、塩を摂らない無食塩文化をもつ人たちは、年をとっても血圧は変わらないという研究でした。
さらに、そうした無食塩文化の人びとが西洋文明と接触してだんだんと食塩消費量が多くなると、血圧が高くなっていったのです。
食塩摂取量が増えると、尿中から排泄せつされる食塩が多くなりますが、摂取した食塩すべてがすぐに排泄されるわけではありません。
排泄されるまでの間、食塩は体内の細胞外液中にたくわえられます。すると、細胞外液の浸透圧を一定に保つために、水分を引き込むようになります。のどが渇くのはそうした反応の現れです。
その結果、細胞外液量の増加と同時に血液量も増加し、心拍出量が増え、血圧が上昇するというのが、食塩摂取量の増加が高血圧を引き起こすメカニズムと考えられています。
しかし、無塩食文化の人びとのデータは地域全体の平均値であり、一人ひとりでみれば、食塩摂取量と高血圧との間に相関関係がみられない例があることが指摘されているほか、血圧が上昇するメカニズムも一時的なものともされます。参考:「食塩と健康の科学」(伊藤敬一著、講談社ブルーバックス)
高血圧症の95%は原因不明
厚生労働省提供の「生活習慣病予防のための健康情報サイト」(e―ヘルスネット)の「高血圧症」のページでは、冒頭で「日本人の高血圧の最大の原因は、塩分のとりすぎです」とありますが、読んでいくと、「高血圧症の95%は原因を特定できない本態性高血圧であり、その背景には遺伝的体質に塩分の過剰摂取・肥満・飲酒・その他の生活習慣要因などが複合的に重なっていると考えられ、メタボリックシンドロームとも関係の深いものです」という記述があります。
塩分を「最大の原因」と指弾しながら、高血圧症のほとんどを「原因を特定できない本態性高血圧」とするのは矛盾しているのでは、と首をかしげたくなります。
最近では、食塩摂取を増やすと血圧が上昇する人がいる一方、変わらない人、むしろ低下する人がいることがわかってきました。さらに、減塩することで逆に血圧が上がる人もいます。その人によって、塩分に対する感受性の有無や程度の差があるのです。
このように、「高血圧に対しては、すべての人が減塩することが最善策」とはいい難い状況です。
塩の質や運動不足も問題では
さらに、高純度の塩化ナトリウムやミネラルを含む塩などの違いに注目せず、「塩分」とひとくくりにしているのも問題です。
アンチエイジング研究などでも有名な白澤卓二・順天堂大学大学院教授は、監修した「カラダとココロが喜ぶ 塩選び&ごちそう塩レシピ」(ダニエラ・シガ著)で、減塩運動に一定の成果があったことは認めながらも、「大きな落とし穴もありました」として、「『塩の量』のみに注目して、『塩の質』に関しては無頓着であった」と指摘しています。
さらに白澤教授は、次のように続けます。
「海塩はマグネシウムが豊富に含まれ健康的な塩と考えられますが、食卓塩や岩塩には健康に必要なマグネシウムが欠如しています。したがって減塩運動は本来、減食卓塩(減
塩化ナトリウム)運動であるべきであったと考えられます」
また、食にも詳しい医師の石原結(ゆう)實(み)氏は、著書「保存・決定病気にならない食べ方・食べ物」で、「食欲不振、消化不良、疲労、嘔おう吐となどの症状をきたし、ひどくなると死につながる」として、いきすぎた減塩としての塩分欠乏に警鐘を鳴らしています。
石原氏が研究したコーカサス地方の長寿者たちは、相当量の塩分を摂っていましたが、労働や運動でしっかり汗を流していました。
そして「現代人が敵視すべきは運動不足であって、大切な栄養素である塩分を敵視するのは本末転倒も甚はなはだしい」と断じています。
塩については、「ミネラルを存分に含む粗塩」を勧めています。
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