マクロビオティックのキーワードMacrobiotic Keyword

マクロビオティックをさらに理解するためには
いくつかのキーワードがあります


身土不二 – しんどふじ –地元のもの、風土に適したものを大切に

昔は「三里(四里)四方のものを食べていれば長生きできる」といわれていました。ところが今はどうでしょう。細長い日本列島のあちこちからはもちろん、地球の裏側からまで、はるばる運ばれてきた食べものたちが、わたしたちの胃袋を支えています。しかし、遠くなればなるほど、食べものが生産されてわたしたちの口に入るまでには時間がかかってしまいます。

そのため、輸入生鮮食品には、鮮度を保ったり腐らせないよう、収穫後にもう一度、農薬を散布するポストハーベストによる残留農薬のほか、添加物などの問題が指摘されています。できるだけ国内産の食べものを選ぶというのは、安全・安心のための一つの重要な目安です。

身土不二とは、からだ(身)と土(土地)は不二(分かちがたく結びついているもの)である、という意味です。「地産地消」という言葉もありますが、できるだけ住んでいる土地でとれたものを食べることで、その土地の気候風土に適した身体になり、健康を保つことができます。

植物は土から直接養分を吸収して自らの身体をつくり、草食動物は植物を食べ、また肉食動物はその草食動物を内容物ごと食べることによって、身体を保っています。動物たちは、それぞれが生きている土地のものを食べて過ごしています。人間にとっても、それが自然本来の姿なのです。

物流や住環境が整備・発達し、本来人間が住むことのない地域でも生活できるようになった現代社会で、まったく原始の生活に戻るのは難しいですが、長年にわたってそれぞれの環境に適応してきた身体をベストな状態で保つには、また、余分なエネルギー消費を抑えて自然環境を保全するためにも、身土不二が一番理に適っているといえるのです。


一物全体 – いちぶつぜんたい –食べ物の命を丸ごと



おうちで料理の下ごしらえをするとき、野菜はどうしていますか。大根やニンジンは葉を切り落としたうえに皮をむく、キャベツや白菜は外側の皮を捨てる。店頭であらかじめ葉や皮がのぞいてあったりしますが、もともとはその食べもの全体がいのちです。ですから、捨てるところはないといえます。(※1)

レンコンの節にはせき止めの効果があり、ニンジン葉や大根葉には、根っこ以上に栄養素が多く含まれています。また、家庭ゴミの多くは台所から出ますが、食べものを余すところなく使って野菜くずを減らせば、かなりのゴミが減量できます。

ごはんは、白米よりも、まけば芽が出てくる、生命力にあふれた玄米をお勧めします。実際、玄米の方が、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB1、鉄、食物繊維などに富んでいます。玄米には「ぬか」があります。漢字で書けば「糠」。「米」と健康の「康」です。逆に、「米」を「白」くすると、それは「粕(かす)」になります。

野菜にしろ米にしろ、丸ごとを食べようと思えば、やはり無農薬・無化学肥料で栽培した安全なものを選ぶのが基本です。「もったいない」と感じることで、食べものを大切にしようと思う心が、自然環境を守り、ひいては健康づくりにもつながるのです。

(※1)植物によっては、じゃがいもの芽のように、毒性を有するものがあります。


主食は穀物過剰な肉食は不健康の元



人間は肉だけを食べる肉食動物ではありません。肉の好きな人たちも、たいていは「ごはんや野菜をしっかり食べなきゃ」と思っています。では、食べものは何をどれだけ食べるのが理想なのでしょうか。答えは、わたしたちの口のなかにあります。

ヒトの歯は全部で32本。多い順に、臼歯(20本)、門歯(8本)、犬歯(4本)に分けられます。臼歯は、かたい穀物をすりつぶすための歯、門歯は野菜や果物を切るための歯、犬歯は肉や魚を食いちぎるための歯です。ということは、人間は穀物を主食として、野菜を中心に、動物性食品も含めバランスよく取り入れた副食をいただく、という食生活が理想といえます。

食事が肉食に傾きすぎると、脂肪やコレステロールが増えて不健康になりがちです。アメリカではそうした反省から、保健医療費の増加に歯止めをかけようと、30年近くもまえに、動物性の食品や砂糖の摂取を減らし、とくに精白しない穀物や野菜、果物の消費を増やすといった食事に改めようと政府が呼びかけました。そのとき理想とされた低脂肪・低カロリーの食事というのは、なんと伝統的な日本食でした。日本食はそれ以降、ヘルシーな料理として、アメリカ人に広く親しまれるようになりました。

食用としての牛一頭を育てるために、膨大な量の穀物が消費されます。肉食を減らすことにより、環境負荷が低減されるのです。


気候・季節に沿ったものを自然のうつろい – 旬を感じる



それぞれ季節ごとの旬を、大切にしましょう。とくに日本は四季があり、さらにそれは二十四節気、七十二候と細かく区切ることができるほど、豊かな自然の機微を感じる気候環境にあります。世界に目を向けてみても、地中海性気候の夏、熱帯気候の乾季・雨季、寒帯の厳冬期など、それぞれの気候には、それに適した食材や料理が存在します。

年中いろんな野菜があふれ、旬の味が失われてしまった昨今ですが、それでも促成栽培などでなく自然のうつろいの中で育つ作物は、それだけで農薬や化学肥料を減らすことができ、味も栄養も格段に優れています。夏にできる野菜はより陰性で身体を冷やし、冬の野菜は身体を温める、より陽性の働きがあるなど、旬の味は、自然のリズムに順応した身体の状態をつくりだしてくれます。

「食育」の祖、石塚左玄は「春苦味、夏は酢の物、秋は辛味、冬は脂肪と合点して食え」と説いています。春には、芽吹いた山菜などの“苦味”を摂ることで新陳代謝を活発にし、冬に蓄えた脂肪や老廃物を流す。夏には“酢”を使うことで食中毒の予防や、食欲増進を図る。秋には“辛味”(※秋の恵み)を摂ることで夏の緩んだ身体を整え、冬に備える。冬には、寒さに耐えられる体力や皮下脂肪をつけるため、油ものや脂肪分のあるものを食べる。

また、料理法も、食材や季節によって変化します。夏は加熱する作業を軽めにしたり、生でいただけるものは酢の物やサラダにしますが、冬は長時間加熱したり、熱々のものを食べて身体を温めます。そういった気候や季節に沿った食生活を考えることが、キーワードのひとつ「身土不二」にもつながってくるのです。


よく噛む食べ過ぎ防止と噛むことの効用



いくら身体によいものでも、肥満になりやすい食べすぎは控えたいものです。食事を始めて、満腹感を覚えるまでには20分前後かかるといわれますが、一口30回以上を目安によく噛むことで、食べすぎが抑えられます。

  1. 消化吸収を高めて胃腸への負担が減らせる、またそのことにより、身体によいと選んだ食べものの栄養分を無駄にしなくなる
  2. あごの発達をうながして歯並びをよくし、だ液がよく出ることで咀嚼・嚥下・発音を容易にし、虫歯や歯周病などが防げる
  3. あごのポンプ作用により脳の血流を増し、記憶力アップや痴呆予防を助ける
  4. だ液をよく混ぜ合わせることで、食べものについた病原微生物を殺菌する
 …など。
とくに穀物や野菜は、よく噛んでこそ、滋味があふれ、こころまで落ち着いてきます。


感謝の心「いただきます」「ごちそうさま」



モノがあふれ、ほしいものが次々と出てくる現代です。食べものもいろいろあり、好きなものが好きなだけ食べられるようになりました。それほど豊かな社会ですが、一方では環境破壊や病気など、マイナス面の問題もかかえています。

当たり前のことですが、食べものはすべていのちです。いのちが生まれ、育ち、収穫されて家庭の食卓にのぼるまでの長い営みと、その間に費やされた尊い労力を考えれば、食べものは粗末にできません。これは“マクロビオティック”だけの考えではなく、すべての物事に共通することであり、子どもたちにいのちの大切さを伝える「食育」の出発点でもあります。

感謝の心は、自律神経の副交感神経を優位にして、消化管機能を高め、食物の消化吸収がよくなるともいわれます。食べもののいのちによってわたしたちのいのちが生かされていることを思い、よく噛みしめましょう。

マクロビオティックとは、人間は大自然の一員であるということを自覚し、自己実現をおこなうこと。できるだけ環境に寄り添った食生活をすることで、わたしたちの本来の生命力を高めて、「本当にやりたいこと」を実行するための、誰でも実践に移せる手法なのです。


マクロビオティックについて


マクロビオティックとは? マクロビオティックのキーワード


マクロビオティック Q&A オーガニック&マクロビオティックライフ